ほんの僅か、こちらを振り向き……間近で見たその顔は、間違いなく知る顔だった。
彼女自身、確実にこちらの顔を見たはずなのに何の反応も読み取ることはできなかった。
実際、混沌とした意識のなかでしか会っていないのだから、向こうはその時見た顔など覚えてもいないのだろう。
――何を思い、進む?
遠ざかる細い背に問い掛けてみる。
綺麗な色を湛えていたであろう青い瞳は、暗い……暗い影に覆われ。
どこか、初めて会った頃のアレックスに似ていた。
――まだ十代
本当なら、恋をしたり、身を飾ったり……先を夢見て一番輝くであろう筈の少女の背には、全てを打ち砕く巨大な剣。
それは異様な光景だった。

