「お前も、結婚なんぞしないほうがいいぞ……少なくとも戦争が終わるまではな」
笑い混じりにそう言って、アレックスの肩を叩き……送り出した。
ボルグの笑顔に応えるかのように、一瞬笑みを見せて任務へ向かったアレックス。
正に彼自身が、戦争が産み落とした悲劇そのもの。
育て、守ってくれる存在を無くした子供の末路。
アレックスは、ボルグが恐れ、持つことを諦めたものの象徴。
そして……
もうひとり……
思い巡らせていた昨日の記憶を断ち切り、トラックを運転しながらミラー越しに荷台のほうをチラ、と見やる。
テント状に荷台を覆う布が、風で波打つのを見ながら……
中にいる存在を思い、ボルグは強く唇を噛み締めた。

