「どうした?」
何故か足を止めたアレックスに声をかけながら、アレックスの視線の先を見やる。
広い敷地内の片隅。
軍の司令部という場所にはいささか不似合いな……豊かな緑が風に揺れる場所。
軍用墓地。
公園のように立ち並ぶ木々に囲まれた墓地へ向かういくつかの人影が目に止まった。
「ああ……また、誰か死んだな」
黒い喪服に身を包んだ女性と……その子供だろうか?
女性の服の裾を、ぎゅう、と掴んだ子供が心配そうに母親の顔を見上げながら歩いている。
俯き、時折嗚咽をもらしながら歩く女性の肩を抱いたやや年上の女性が、歩を進めるように促すのを……じっとアレックスは見つめていた。
「旦那を亡くしたか……いつも泣くのは女子供ばかりだ」
アレックスと並び、足を止めてその様を眺めながらボルグがつぶやくと、アレックスはボルグの方へと首を傾けた。

