あたしは10月に大ちゃんからもらったメールを開くと、愁一郎の車のナビに大ちゃんの家の住所を打ち込んだ

なんで大ちゃんが、中途半端な時期にマンションを買って、引っ越したのだろうって少し疑問に思ってたんだよね

通勤に便利なマンションを見つけたから…なんてメールで返信してたけど、違ったんだね

大ちゃん、軽部先生と新しい生活を始めるために用意してたんだ

マンションの下に車を止めると、マンションの呼び鈴を押した

『…涼宮さん? こんな時間に…』

インターフォンから軽部先生の暗く重い声が聞こえた

やっぱりこっちに来てたんだ

ううん、もしかしたらもう二人で住んでいたのかもしれないけど

「夜分遅くにすみません。大ちゃんの夢を見たんです。それでちょっと…」

『外は寒いでしょ。どうぞ』

エントランスの自動ドアが開いた

あたしは、愁一郎と自動ドアをくぐると一緒に大ちゃんの部屋に向かった

玄関の前にある呼び鈴を押すと、すぐに軽部先生がドアを開けてくれた

疲れ切った表情というか…泣きすぎて、流れ出る涙さえもうない…みたいな表情で、無理やりに微笑みを作った

「こんな暗い顔で、クリスマスイブを過ごす女は私くらいね」

軽部先生が、玄関にスリッパを二組出してくれた

「あのっ。寝室にベッドってありますか?」

「はい?」

私の質問に、軽部先生が驚いた声をあげた

「陽菜っ! いきなり失礼だろ」

愁一郎がスリッパに足を入れながら、私に小さい声で怒った

「だって…」

「ああ。そこの…右のドアが寝室よ」

「すみません」

あたしはペコっと頭を下げると、スリッパも履かずに寝室のドアを開けた