「ウソ」


 私は少し俯いて呟いた。


「はっ?」


さすがに耀も思わず振り返った。


「今の耀は、耀らしくないもん・・・」


 一瞬、耀の顔が曇った。


「俺の何が分かるって言うんだよ」


「分かんないよ、何も。だから、耀と話したくてここまで来たんだよ?」


 耀の顔が苦痛に歪んだような気がしたが、私は構わず続けた。


「私、あのままじゃどうしても納得行かなくて。だって、どう考えたって、あんなの・・・何もないわけないじゃん・・・」


 バンっと大きな音が辺りに響いた。気付くと耀の腕で、四方を塞がれていた。


「耀?」


 そう言って、顔を覗き込んだ。耀は今にも泣きそうな顔になっていた。