しばらくお互いの話をしていたが、時は渟まることなく過ぎて行く。


直に、別れの時もやってくるであろう…。


「私、もうすぐ降りなきゃ・・・」


「おー、そっか。随分話したもんな~」


 あっけらかんとした衣玖の態度に、私は寂しさを覚えた。


〈あれ…また?〉




「・・・なー、アド交しよーぜ♪」


 一瞬、自分の耳を疑った。あまりにも唐突で、ビックリした。


「あ・・・ケータイ持ってなかった?」


 後味悪そうに衣玖が言った。その言葉に我にかえり、慌てて言った。


「ううん、そんなことないよ。・・・いいよ」


 私は照れくさくなって、俯いてそう言った。


「ははっ、さんきゅ。いや、このままバイバイってのも勿体ねーかなって思ってさ」


 同じことを思っていた事に、自然と笑みがこぼれる。


「だね・・・。これも何かの縁だし、ね?」


 そう言うと、衣玖は最初に見せたあの笑顔で、笑った。



〈やっぱり、衣玖が笑うと綺麗だな・・・〉


 ふと、そんな風に思った。