「まさかずっと逃げかくれるつもりかしら。もうっ」

 賭けが始まって三日目。
 週末の七曜は、世間一般でいう休日だった。
 平日に課される王族の修業も、もちろんお休み。

 国王なら休日返上で公務を行うこともある。まだ王女の私はそれもなく気楽なものだ。
 即位前ともなると、引き継ぎのため公務につきそったりするものだが。

 ……それは、お祖父様が許さなかった。

 というのも、お父様が亡くなられたころから、各地──特に国内──で、魔族による事件が(あと)を絶たなかったせいだ。さらに、昔、魔族にさらわれたライラ伯母様の悲劇もあいまって、私がお城の外に出ることを(かたく)なに拒んだ。

『希望と謳われる王女に何かあっては、それこそ国の一大事』

──とは、現役復活を決めたときのお祖父様の弁。
 ほんとうは、孫娘を手もとに置いて甘やかしたいだけのような気がしないでもなかったけれど。

 まあ、そういうわけで。
 お祖父様の公務につきそえない代わりに、休日を自由に過ごすことができるのだ。

 それは良くもあり、悪くもあった。

 めずらしい髪色ゆえに、お忍びで城下街に降りることもできない。自由が許されるのは飽くまでお城の敷地内のみ。そのぶん、許された範囲でハチャメチャやってきて「勝手知ったる我が城」なんだけどね。

 そこで、不良騎士との賭けの話にもどると。