背丈はあるが騎士のわりに線の細い優男。雪のように輝く長い髪を一つに束ねて肩に流している。瞳は涼しげな氷青色。
 なんとなく身のこなしが優雅に感じるのは、貴族育ちの坊ちゃんだからか。

 いや、それだけではない。

 何がと問われれば説明しがたいが、彼はどこか他の騎士や貴族とは違うオーラを放っているように見えた。
 不思議な雰囲気を持つ男だ。

「連れが失礼をした」

「ああ」

「僕の名はレガート=グランヴィオール。空姫親衛隊の副隊長を務めている」

「副隊長……」

 言われて初めて白銀の男が頭に巻いているバンダナに目が留まった。俺のものと同じデザインだが、彼の色は銀。
 親衛隊はバンダナの色で役職分けがされている。金はナンバー1、銀はナンバー2──すなわち、隊長と副隊長の証だった。

「君の名は?」

「リュート=グレイだ」

「僕は騎士に平民も貴族も関係ないと思っている。だが、噂にも惑わされない。実力を知るまでは、僕も君を隊長とは認めない。覚えていてくれ」

 言葉は終始おだやかだったが、投げかけてくる視線は凍りつくほど冷たい。
 火責めの次は、氷責めか。

「わかった」

 ──まともだが敵には変わりない……な。