(どこが……っ!?)

 体の奥底から、ふるえとともに嘲笑(ちょうしょう)がこみあげてくる。
 こんな(みにく)い私のどこが女神だというのだろう。

(慈愛の女神にふさわしいのはお母様のほうだわ……)

 私はあんなことを言えない。
 私は魔族を憎まずにいられない。

 私は、慈愛の女神なんかじゃ……ない。


(ああ、もうっ!)

 いてもたってもいられなくなってヤケクソぎみに目の前の回廊を走りだした。

──ズキンッ!!

 どこからともなく体がきしむ音。鈍く重い痛みがつきまとう。新しい護衛騎士とやりあったとき受けた衝撃が、今ごろになって痛みだしたのだろう。あちこちがアザになっているかもしれない。

 いや、この痛みはそれだけだろうか。
 この痛みは……

 走る振動で体のアザがズキズキとうずいたけれど、かまわず走りつづけた。

 うずく痛みも、
 黒いきもちも、
 ふりきるようにして。

 がむしゃらに、走りつづけた──……


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