Lute side
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 俺たち親衛隊は何組かに分かれて夜の町を捜索した。

 なぜ、ティアニス王女は忽然(こつぜん)と姿を消したのか。理由がわからないまま彷徨(さまよ)うのは、闇夜の戦闘よりも生きた心地がしなかった。

 町全体が寝静まっているせいで人影一つ見当たらない。これでは目撃情報も絶望的。役場に捜索の人員を要請したほうがいいか。いや、復興中にそのような余裕はないか。

 そんなことを思案しながら闇を駆ける。

 小高い丘に続いているだろう坂道に差し掛かったところで、こちらにゆっくり向かってくる影が見えた。

 こんな夜更けにうろつくのは、敵か、味方か、町民か、ティアニス王女か。警戒しながら近づくと、それは女性のシルエットで見覚えのある恰好をした人物だった。闇と同化するような紺色のワンピースに白いひらひらが浮かぶ──

「シレネ!」

「はい」

 俺の呼び掛けに驚く様子もなく答える。

「ティアニス王女が──」

 いなくなった、そう続けようとして咄嗟(とっさ)に止めた。
 代わりに、確信を持って問い掛ける。

「王女は……どこにいる?」

 常と変わらぬ様子で黙って藍の眼を伏せた。