年齢をネタにしてひとしきりいじられた後、

「アルス、ティアニス王女に会いに行かないか?」

 俺は、本来の目的を思い出して提案した。就寝前にティアニス王女の様子を見に行こうと廊下に出たところを、この三人に呼び止められたのだった。
 戦闘後の態度から考えて、俺一人で行っても神経を逆撫でするか避けられる気がするから、顔を見せるならアルスたちのほうがいいと思った。

「え?」

「心配しているだろう」

「そんな、姫様がオレなんかの心配なんて……」

「本当にそう思うか?」

「ティアニス姫のことだから責任感じているよ」

 横からレガートが断言した。幼馴染みゆえに彼女の性格をよく把握しているだろうから、説得力がある。
 アルスは少し物思いに(ふけ)り、

「そっか……そうだな。そういう姫様だもんな。オレ、行ってくる!」

 晴れやかに答えた。



「まあ、あなたたち。そろってどうしたの?」

 宿の中でも最高級の部屋が並ぶ一郭に差し掛かったところで、藍色の少女と鉢合わせた。

「あ、エリーゼ姫様! 先ほどはありがとうございました!!」

「あら、もう元気になったのね」

「はい、この通り──ぃってえええええ!!」

 元気アピールに派手なポーズを取ろうとして(ふさ)がったばかりの傷の痛みに悶絶するアルス。「無理するな」とすかさず突っ込むベン。お笑いコンビか。

「エリーゼ姫、ティアニス姫はどちらに?」

 レガートの問いに、真紅の瞳が曇る。

「あなたたちも、さがしてるの?」

「どういうことだ?」

「さっきお部屋にうかがったら、いらっしゃらなくて……どこにも見あたらないの」

 嫌な予感がした。