「あなたの右眼も、おなじではなくて?」

 不意に顔の傷を指された。

 確かに、自分も『この眼でいかに戦うか?』ということに悩んでも、隻眼であることそのものに不幸を感じたことはない。障碍というと深刻に捉えがちだが、彼女のそれは少なくとも俺の隻眼と同じ感覚なのだと理解した。

「わたくし自身が他人になにを言われようと平気よ。気にしなければいいんだもの。
 いちばんイヤなのは、たいせつな方がわたくしのせいでイヤな想いをすること。わたくしが傷ついたらその方々がもっと傷つくから」

──だから、わたくしは気にしないのよ。
と、大人びたことを子供っぽい無邪気な顔で話した。

 気にしないことを努力してできるようになったのか、初めから備わっていた資質なのか、俺にはわからない。ただ、どちらであっても、それは人として尊敬に値することだと思った。

「凄いな、エリーゼ姫は」

 素直に感想を伝える。

「……やっぱりあなた、あの(ひと)に似てる」

「あの人?」

 かすかな呟きを拾ったら、チラリと振り向き流し目で

「ひみつよ……」

 妖しく艶やかに囁いた。