「エリーゼ姫、すまなかった。処罰を受けよう」

 馬に揺られながら、自分の前に(またが)っている藍色の少女に謝罪を述べた。

「あなたを罰する気はないけれど。ただ……できれば、この力は使いたくなかったわ」

「すまない」

 戦闘が終わった今も彼女の眼に頼ってしまっていることに、もう一度頭を下げた。やむを得ない状況といえども、自分の障碍(しょうがい)をこのように使われることは不快に感じて当然だろう。

 (さと)い少女は俺の考えを察したのか、「あっ」と小さく漏らして補足した。

「障碍のことじゃなくてよ?」

「違うのか」

「これは、わたくしの特技だと思っているし。“闇姫”って気味悪く思う人もいるけれどね」

「嫌な想いもしただろう」

 視察出発前、レガートに聞いた話を思い出す。

 障碍を知る者からも知らぬ者からも異質の目で見られ、離宮に閉じこもることを余儀なくされた。幼いころからそのような扱いを受けて育ったら、心に深い傷を負ってもおかしくはない。

 そんな俺の物思いを見抜いているのかいないのか、少女はなんでもないことのように語る。

「わたくしよりも周りがね。おじいさまは陰でいろいろ言われていると思うわ。おねえさまも……わたくしを想ってくださる方々は気の毒がるけれど、わたくしには、これが『ふつう』なんだもの。
 不自由や不便はあっても、不幸ではないわ」

「そうなのか」

 賢明な少女であるのはわかっていたが、これはあまりにも悟りすぎではないだろうか。