刃をザクッと地面に埋めこみ、片膝をついて

「そのまま……辛抱できるか?」

 次に発した言葉は想像とちがうものだった。苦しみあえいでいたアルスでさえも三白眼を見開いているから、聞きちがいではないらしい。隊長の顔を凝視して、声が出せない代わりにしっかりとうなずいて見せた。

 リュートは颯爽と立ちあがる。

「ロキ、治癒をかけ続けろ! 全速力で町に向かう!!」

「な、何を言い出すんですか。だって……彼はもう」

 気弱な神官はおどおどと反論したが、有無を言わせず

「町には教会がある。助かる見込みはある!」

「ぼくの力じゃ……とても、町までは」

「泣き言は限界までやってから言え!」

「あ……貴方は、魔法を使えないから、わ、わからないんです……。だから、そんな簡単に言え──」


「わからないのはお互い様だ!!」


 ビリビリと空気がふるえるのがわかった。あまりの気迫にロキは「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。

「アルスは生きている、意識があるっ、話も聞こえているんだ! 生きようと必死で闘っている者の前で簡単に諦めるなっ!!」

 激しい。
 厳しくも冷静さが残っていた戦いのときよりずっと。
 凍てつく大気を一瞬で燃やすほどの熱を発しているかのように。

 こんなに激しいリュートは初めて見た。

 消し炭になるほどの熱風にあおられて、ロキは泣きそうになりながら声をしぼり出す。

「……で、も……ぼく、は……」

「今諦めてお前は後悔しないのか!?」

「それは……っ!」

「決めろ!」

 ほんとうはゆっくり考える時間などないはずだけど。それでもリュートは、ロキが自分で覚悟を決めるのを待った。