『どうして』あなたは駆けつけることができたの?



「姫、様……ご無事です、か……?」



 貫かれた腹部から流れる赤と同じ色をした髪の青年が、息だけでとぎれとぎれささやいた。

「アルスッ!!」

 かたむいていく彼の名前を叫んだとき、一本の矢と銀の神速剣が闇の魔族を見舞う。矢は心臓をうがち、銀の刃は首をはね、恐ろしい金色の眼をしたそれはあっというまに物言わぬカタマリとなった。

 リュートは残党の危険をうながし、警戒態勢をしく。

 まったく予想だにしていなかった五人目の魔族の存在は、この場に新たな緊張を生んだ。

「アルス! しっかりしろっ、アルス!!」

 ベンとレガートは、傷ついた戦友(とも)のもとへだれよりも早く駆けつけた。
 地面にはおびただしい血、血、血。
 ふつうの手当てでどうにかなるものじゃないのは明らかだ。

「ロキ、早く回復を!」

 レガートの指示を受けて、やわらかな青白い光がアルスの体をつつむ。それはすぐに小さくしぼんで消えた。

「ダ、ダメです……。ぼく、無理です……っ!」

 小動物のようにふるえながらロキは小さくうったえる。

(え? 無理って……どういうこと?)

 鼓動が、一つ、不気味にはねた。