冷たい感触が全身にまとわりついた。ガボッと口から泡を吐く。鼻にツンとした痛みが走って息ができない。

 ──“水使い”だ!

 こんな超常現象を起こせるのは魔族しかいない。近くにいるはずだ。どこにいる! どこに!?

 憎しみとあせりが入り混じったきもちで必死に探そうとしても、冷たい浮遊空間でのろのろと手足をバタつかせることしかできない。

 助けだそうと試みている人の声がかすかに聞こえた。けれど、この不思議な水の(おり)は外からでもカンタンにうち破れないものらしい。

 どうしよう。どうしたら。このままじゃ息が、つづかない、苦しい。だれか、だれか!

 絶望と無力感が心をむしばむ。

 イヤだ。あきらめたくない。こんなところで。私はまだなにも……なにもできてないよ!護られるばかりで、お父様の仇を討つどころか、魔族を目にすることさえ、この剣を振るうことさえも!

 嘆きも叫びも文字どおり水の泡と化す冷たい牢獄では、逃れようともがけばもがくほど自分の命を縮めるだけだった。

 視界が、白く、ぼやける。


 もう……



 息が…………