Tirnis side
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「二番隊、陣形を縮小! ティアニス王女様を護れ!!」
「三番隊、敵の進入を許すな!!」
「我らの身体を盾とせよ!!」

 小隊長の指示が飛びかう。私を中心に囲んで、消えた光の代わりに隊員たちの背中が新しい壁となった。

 反射的に柄をにぎる手に力がこもる。石化の魔法が解けたように体が動き出したい衝動に駆られた。腹の底から湧きあがる衝動をさっき下した自分の決断が抑えつける。

 戦いたい。
 動けない。

 心が二つに引きちぎれそうだ。

 ロキの感知によると、結界が壊れた直後に魔族の気が一つ消えたらしい。おそらく前線で戦っているリュート、レガート、一番隊のだれかが倒したと思われる。

 残る魔族は、あと一人。

 陣形を小さくしたことで、戦いの場は完全な闇の中ではなく魔法で灯した光が届くところまで狭まった。

 しかし、戦況は決して明るいものとは言えなかった。

 魔物の数が減らないことも、隊員たちのケガや疲れも、目に見えてハッキリとわかってしまう。一刻も早く最後の魔族を見つけなければ、こちらの戦力がけずられるばかりだ。

 ちぎれそうな心をふり切って、叫んだ。