「姫様には『空姫親衛隊(そらひめしんえいたい)』という優秀な護衛騎士(ごえいきし)がついております」

「優秀……ね。どいつもこいつも私に勝てないのに?」

「お護りする王女相手に本気を出す騎士はおりますまい」

「…………」

 さすがに七十年も生きているだけはある。口で勝負して(かな)うわけがない。

「さ、帝王学のお時間ですぞ」

(こうなったら強行突破(きょうこうとっぱ)!)

 ダリウスが背を向けて扉へ歩き始めたスキに、逆方向へ駆けだす。

「えいっ」
「ひっ、ひひひひ姫様!?」


「でや────っ!!」


 威勢のいいかけ声とともに窓から飛びだした!
 目の前に広がる青い空が急速に下から上へと流れていく。きもちのいい浮遊感。
 そのまま体があわや地面に激突するという寸前で、力強い腕がそれを阻(はば)んだ。