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 騎士という立場から、王女相手に本気で手合わせしてくれる者はそういない。
 アルスは私と素直に向き合ってくれた数少ない一人だ。

 そんな人たちともしかしたらいっしょに戦えるかもしれない、と思うとそれだけで心が躍った。



「シルバもつれていくの? エリーゼ」

 はずんだ足どりで馬車に乗りこむと、となりの少女が抱きかかえている黒いけむくじゃらに気づいた。

「ええ。おじいさまにはなつかないし、(やしき)にのこして悪さしないか心配だから。いいかしら?」

「私はかまわないわよ。ねぇ、シレネ?」

 向かい側のシートに顔を向ける。

「はい。お世話が必要でしたらお申し付けください。責任を持ってお預かり致します」

「ありがとう。わたくしの言うことはよく聞くから手はわずらわせないつもりよ」