God aspect
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 ティアニスと奮闘したヴィクトルの私室。

 先ほどの喧々囂々(けんけんごうごう)とした空気とはうって変わって、今は部屋の主が豪奢(ごうしゃ)天蓋(てんがい)の下で一人おだやかに眠っていた。

──と思いきやにわかに双眸(そうぼう)を見開き、窓辺に向かって発した。

「……これで、良いのだな?」

 ヴィクトルの言葉に反応するように、きしんだ音を立てて窓がゆっくりと開いた。
 藍の夜風に()外套(がいとう)がなびく。

「充分だぜ」

 淡い月光を背にしながら満足げにうなずいた男は音もなく部屋の中に降り立つ。寝台のそばでひざまずき、服従の姿勢のまま軽口を叩いた。

「しっかし大王サマ、演技上手いじゃねぇか!」

 常識外れの登場も軽口も国王直属の位を持つこの男であればこそ許される。ヴィクトルは男の物言いをとがめずに重々しく返した。

「芝居のつもりはない。全て本心だ」

 重い言葉にこめられた悲愴さに、さすがの男も過ぎた言葉だったと反省する。