Lute side
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 気がつけば、自分が普通とは違うと理解していた。

 隻眼になるずっと前から。
 きっと、生まれたときから。

“風の声”が聴こえた。

 人に話せば奇異の目で見られたから「知られてはいけないものなのだ」と、(おの)ずと悟って口を閉ざした。

 多くを語らなかったおかげか、村の連中にからかいの対象とされたくらいで正体を追究されることがなかったのは幸いだった。

 そもそも俺自身も何者かわからなかったのだが。成長するにつれて、ぼんやりと己の影が見えてきた。

 それがハッキリと(かたど)られた“闇”として目の前に覆いかぶさったのは
──五年前。

 右眼の光を失ったとき。


 いや……






 俺が養父(ちち)を殺してしまったときに──……