それは、まるで、呪いのように。

 心臓を鷲づかみされる。

「──どう、いう……こ……と?」

 絞めあげられた手首の痛みと息苦しさに堪えながら、なんとか声をしぼりだした。

「魔族は人の形をしている。知らないわけじゃないだろう」

 静かにうなずく。

 魔族は“人間(ヒト)型の魔物”とも呼ばれていて、見かけは人間とほとんど変わらない。
 見分ける特徴はあるけれど。
 実際に見たことがなくても常識としてだれもが知っていることだった。

「女子供もいる」

 一瞬、息が止まる。
 とどめを刺すように彼は秘めた激情を解放した。

「お前はそれでも魔族を殺せるか!?」

 全身を揺さぶるような激しい追及。うつむいた心に投げかける。
 私は──…


 ──殺せるか?

 ──殺せないか?

 人と同じ形をした“魔族”を──


 焦点を失った瞳をぎゅっと閉じたとき

 どこかで……





“ 花 ” の 香 り が し た。