God aspect
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 冷たい石造りの回廊で、大きく床を叩く革靴。一人ぶんのはずが灰色の壁に跳ね返って二つ重なっているように聞こえる。

 振り子時計のように規則正しく刻むそれが、ふっ……と途切れた。

 体の角度は変えずに視線だけをゆっくり後ろに動かす。壁には褐色の扉が等間隔に並んでいる。そのうちの先ほど自分が出てきた、たった一つを見つめて。

 鋭く光る──藍色の眼。

「オレの代わりにティアを護ってくれよ……リュート」

 吐息混じりのつぶやきを残して、また歩き出す。

 背にかけた(ころも)を燃える炎のようになびかせ、やがて薄暗い回廊の果てに消えていった。


 人知れず────……



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