Tirnis side
********************

 暗い……暗い……
 ここはどこ?

 四角いお部屋がいっぱいで。
 おひさまの光もない。
 ひんやりした空気にひとり。
 迷子のように、さまよっていた。

「ダ、レ……?」

 だれかに呼ばれた気がしてふりかえる。

 いちばん奥のお部屋に髪の長いきれいな子が、ひとり、ひざを抱いてうずくまっていた。

 ──あなた……だぁれ?

 わたしを呼んだのは、あなたでしょう?

 その子はなにも言わない。瞳はなにも映さない。

 そばに行こうと思っても、その子とわたしの間にたくさんの黒い棒がたてにならんでジャマしている。

 ──さみしく……ないの?

「サ、ミ、シ、イ? サミシイって……ナニ?」

 ──じゃあティアが、お歌うたってあげる!

「オ、ウタ……?」

 ──うん! ゲンキのでる、お歌だよ!

 暗いお部屋で、暗い瞳をした子。

 その子のために歌をうたった。
 笑ってほしくて歌をうたった。

 だけど、その子は笑わなかった。

 ──どうしたの? なんで泣いてるの?

「ワカ……ラナイ」

 泣かないで……

 いつもおとうさまが聴かせてくれるお歌。
 それを聴くと、わたしはとっても幸せになれるから。
 あなたも笑ってくれると思ったの。

 その子といっしょに、泣きたくなった。

 おとうさま、なんでかな?
 なにがいけなかったのかな?
 ねぇ、おとうさま……

 助けをもとめるように心の中で問いかける。


 でも……
 小さな私が声を枯らして呼びかけてみても、答える声などありはしない。

 だってもう、お父様は……


 お父様────……