消えかかった水柱を追って川底に身を投じる。……と、冷水に浸かったのは太腿(ふともも)あたりまで。鎧があっても溺れるほどの水位じゃない。間もなく水中から自力で顔を出した。

「冷た~」

「すまん。加減を誤った」

 怒るかと思えば「ふふっ」と妙に弾んだ息を吹き出す。それに無言で小首を傾げれば

「あなたが加減を誤るくらい、私、強くなったのかな?」

 ああ……そういうことか。冬の川に落ちたことより、そちらのほうが重要らしい。このジャジャ馬姫め。

「……猿も木から落ちる」

 本当のことなど言ってやらない。期待外れの返しに「ぶーっ!」と唇をとがらせる。変わり身の早い百面相を内心微笑ましく思いながら

不貞腐(ふてくさ)れてないでサッサと上がれ」

 にべもなく吐き捨てた。俺もとことん性格が悪い。

 不服そうに「はぁい」と幼児のような間延びした返事をして川から上がった途端、大きなくしゃみを一つ。

「脱げ」
「は!?」