戦闘は、刹那の判断が物を言う。生きるか死ぬかの局面でいかに『生』を掴み取るかは、頭で理解するより体で覚えるほうが早い。

 しかし、手取り足取り腰取り優しく教える気はない。

 ……腰取りは余計か。

 己で悩み傷つき痛みを伴ってこそ戦う技術と覚悟が身につく。少なくとも俺は常にそうしてきた。

 自分に『できる』か『できない』か、じゃない。
『やる』か『やらない』か、だ。
 それが無理だと音を上げるなら……

「護られる姫でいるか?」

 ニヤリと皮肉を込めた。途端に垂れ下がっていた眉をくわっと吊り上げて、切っ先を前に突き出す。

「……っ! やるわよ! やらないなんて言ってないじゃない!!」

 ──大人しく俺に護られればいいものを。

 ジャジャ馬姫にこう言うと怯ませるどころか逆に人参ぶら下げて(むち)叩くようなものだが、優しい物言いは苦手だ。

 そしてまた、森の清流に剣戟の音が鳴り響く。

 音速が舞う。
 疾風が唸る。

 何度防がれようとも攻めの一手を頑なに譲らない音の刃が──
 天高く突き上げる水柱に吸い込まれた。

「しまった! おい、大丈夫か!?」