大地を蹴る。
 バネのように跳びあがって渾身の一撃を叩きこんだ!

 銀が交わり金属音が耳をつんざく。驚いた森の住人たちはいっせいに赤い空へ羽ばたいた。

 正面からの振りおろし。彼なら受けとめられて当然だと思ったから、ためらわなかった。

 でも今の間合いをつめた速さを目のあたりにしてどこまで涼しい顔を保っていられるかしら?
「どうだ!」とばかりに銀の十字越しからにらみつけた。

「ほう……速いな」

 感心したような口ぶりだけど、顔は涼しいままで全然感心していない。むしろ「その程度か」とバカにされた気がした。

「なら、これはどう!?」

 十字を崩し、得意の音速剣をくり出す!
 たった一つの刃が分身したように無数の弧を描いた。

 私の剣は小まわりが利く。一度ふところに入って間合いを制してしまえば、こっちのほうが断然有利だ。彼の大剣で猛スピードの連撃を防ぐのは不可能に近い。

 しかし、さすがと言うべきか、彼はあせった様子もなく軽やかに刃とたわむれている。それでいて獲物を狙う獣のような眼はわずかなスキも見逃さないだろう。

──でも!

(反撃のスキは与えない!)

 風を斬るリズムが変わる。
 手合わせした騎士のほとんどはこの超音速に翻弄(ほんろう)されて白旗を上げた。