その後、心なしかわずかにやわらかい口調で言う。

「まあ、寸止めしてやるから心配するな」

「なら、あなたのほうが危ないじゃない。私にそこまでの芸当できるかどうか……」

「お前の攻撃は絶対あたらない。本気でやれ」

「す、すごい自信……」

『自分も相手も命を落とす可能性がある』って言った舌の根も乾かないうちに『絶対あたらない』!?
どれだけ自信家なの、この人。

「なんだ。怖いならやめるか?」

 やや嫌味をこめた口調で眉を吊りあげた。明らかに挑発だ。
 それなら……

 挑発に乗ってやる!

「やるわよ、やってやろうじゃない! ケガしたって知らないからねっ!」

 愛用の剣を勢いよくぬいて啖呵(たんか)を切った。

「上等だ。──……来い」

 静かにつぶやいて腰のバスタードをぬきはしたが、かまえない。どこからでもかかってこい、と言うようなスキだらけの直立。それがカンに障った。

(……なめてるの? 女だから? 王女だから?)

 彼は私の実力を知らない。

 初めて会ったときは、兵士に借りた慣れない剣と重たい鎧につつまれていたから本来の力が出せなかっただけだ。

 ケガをされては困るけれど、そんな涼しい顔をされたらちょっと脅かしてやろうという気にもなる。

 ──ならば先手必勝!