「『真剣じゃないから死なない』と考えるほうが危険だと思うがな」

 ズバリ、無意識に思いこんでいたことを言いあてられて言葉を失った。
 低く抑揚のない声でさらにつづける。

「武器は『命を(あや)める道具』だ。
殺傷力に差はあっても『武器』である以上、自分も相手も命を落とす可能性があることを忘れるな」

 心に深く突き刺さった。

 真剣──って、ちょうど今の彼のことを指すのだと思う。鋭い視線にからめとられ、抜き身の刃をのどに突きつけられたときと似た感覚が体を支配した。

 武器の怖さはフェンネルにも教わったことだ。自分でも書物で調べてじゅうぶん理解しているつもりだった。

 ほんとうに『つもり』だった。

 武器をあつかうことがどういう意味を持つのか。私の認識の甘さを見ぬいて、説いている。
 ほかの手合わせした騎士とはまるでちがう。

 適当でもない。
 惰性でもない。
 片手間でもない。
 息ぬきでもない。

 彼はただの稽古でも、やるからには

“真剣”なんだ──……

「──わかったか?」

 念を押すように問いかけてきた声音は研ぎ澄まされた刃のよう。
 今度は私もひるまなかった。

「うん。わかった」

 目をそらさずにハッキリ答えたのを見て、小さく「よし」とうなずいた。