──えーと……これは、どうすればいいんだ?

 冷凍されて霜がこびりついたみたいに頭が真っ白になった。

 一般的に男としては非常に喜ばしいこの状況。
 駄菓子菓子(だがしかし)──間違えた。だがしかし、素直に喜んでいる場合でもない。

「……不可抗力だ」

 凍りついた思考をなんとか自力で半生解凍してそう答えた。

「ふ、不可抗力って!」
「お前をかばってこうなった」

 と言うしかないだろう。もちろん嘘ではない。あの状況で触る場所にいちいち構っていられるか。

「わかったからさっさと放してよ!」

 そうしたいのはやまやまなんだが……頭のほうは半生解凍できても、体のほうはまだしっかり固まっているらしい。放そうと思っても、なぜか意志に反して放せない。いや、むしろ意志に反していないのか?

「重くて動けないんでな」

 苦しまぎれに言い訳にもならない言い訳をしてみる。
 本音は「動けない」というより「動きたくない」だけだが。

「失礼ねっ、そんな重くな──ってゆーか! 放すくらいできるでしょ!?」

「できん」

 彼女の要求を却下。自分の欲求のほうが勝ってしまってどうしようもない。

「なんで!?」

 もうどんな言い訳をしても無駄だ。開き直ってやる。

「まあ、なんというか……男の性だ」

「しれっと本音を言うんじゃないわよーっ!!」

 ついに胸だけじゃなく逆鱗(げきりん)にも触れてしまった。