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 俺はのどかな森の梢で森林浴を楽しんでいた。もうすっかり日課になってしまったな。

 ティアニス王女との勝負も、今日で終わる。

 なんだかとてつもなく長い一週間だった気がする。いや、過ぎてみるとあっという間な気もするが。長いような短いような、それでいて馬鹿馬鹿しい一週間だった。

 こんなふうに時が不思議に長くも短くも感じられるのは、充実したものが多いはずなのに。

 例外もあるということだな。

 まあ、それも今日で全て片がつく。馬鹿馬鹿しくはあったが、そのおかげでこのような憩(いこ)いの場所を見つけられたことは収穫だった。

 ……なんてことを考えながら、心地いい空気にまどろんだ。

 ゆっくりとなにかが近づいてくる気配にピクリと反応する。
 規則正しく草と土が擦れる音。これは、動物ではない。人か?

 かすかに、けれど確かに大きくなっていく音のほうに視線を動かす。間もなく俺の斜め下──川辺のところで止まった。

 その正体に一瞬目を見開く。空色の髪の少女が、辺りをキョロキョロ見回していた。

 ──ほう、俺を捜しにきたのか。よくここがわかったな。

 呑気(のんき)に腕組みをした。
 少し視線を上げればすぐ見つかる位置にいる。
 せっかくここまで来たんだ。しばらく寝た振りでもして好きにさせてやるか。

 見つからなければそれで良し。
 見つかってもどうとでもなる。

 余裕たっぷりでゆっくり目を閉じた。