第二・四曜、紫の日。
 ついに、賭けは最終日を迎えた。

 大気が限りなく澄んだ森の小道。
 女神の恵みが木洩れ日となって降りそそぐ。そのやわらかな光は、小さな森の住人たちを優しく見守り、悪しきものが立ち入ることを決して許さない。

 やすらぎにつつまれたこの森は『聖地』と呼ばれる場所の一つだった。

 そして、小道の先にある水辺──清(さや)かな川のほとりまで来て足を止めた。

「いた! あんなところに……」

 ふと空を見上げた視界の先に。
 空へと伸びる大木のこずえに。
 足を組んでくつろいでいる人の姿。

 ここからだと逆光で顔が見えないけれど、あの青いマントはまちがいなく親衛隊のものだ。あんなところに登って職務怠慢(たいまん)する不良騎士なんて彼しかいない。

 二、三歩近づいてもこっちを向く気配はない。ということは、もしかして寝ているのかしら?

「よーしっ」

 今がチャンスとばかりに目を光らせた。