Tirnis side
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「最悪……」

 空を見つめてげんなりとつぶやいた。

 月もまだ出ていない宵の口。インクをこぼしたようにまっ暗な夜空は、そのまま私の心を映しているかのよう。

 第二・三曜、空の日。賭けは六日目。

 昨日はあれから、たっぷり、こってり、じっくり、ねっとり、何時間にもわたって説教された。あげくのはてに、サボったぶんを取りもどすべく山のように課題を出され。終わらせるのに今までかかってしまった。

 今日はマジメにがんばったから、明日のお勉強は通常の量にもどしてくれるらしい。

 が!

 おかげで六日目はなんにもできずに終わってしまった。

 就寝まで時間があるから騎士宿舎を訪ねてみたけれど、やっぱりもぬけのカラで。職務はとっくに終えているはずなのにどこで油売っているのか。

 賭けの期限は明日に迫っている。あと一日。たった一日!

 でも、お勉強をサボるという選択肢は後が怖いので、私も二度はやりたくない。

「せめて居場所がわかればなぁ……」

 騎士宿舎から自室へもどる途中の庭園で立ち止まり、何度目かのため息をついた。

 ふいに、近くの植えこみがガサッと揺れた。風は吹いていない。

 なにげなく音のしたほうをふりかえった
──途端に体が硬直する。

 不気味な金の光が二つ、闇にひそんでいた。

(どうして!? こんなところに魔──)

 剣をかまえるヒマもなく黒い影が襲いかかってきた!
 その勢いにひるんで尻もちをつく。