Lute side
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「ったく。どこにいるんだ……王女は」

 長い長い王宮の回廊で思わず愚痴を吐いた。

 あれから地図の印をいくつか回ってみたが、未だ王女は見つからない。俺に見つけてほしいならもっと簡単に姿を現すと思ったのだが。

 次はどこを捜そうか、と少しよれよれになった地図を広げて思案した

──瞬間、攻撃的な気配を察知して体を反転する。

 風斬り音が耳のすぐ横で唸りを上げた!
 反射的に跳びのいて距離を取る。
 手から離れた地図がヒラリと床に舞い落ちた。

 鋭く見据えた先には、回廊の中央で胸を張り堂々と立ちはだかる人の姿。

 ……ようやくおでましか。

「ふっふっふっ。やっと見つけた!」

 いや、それは俺の台詞じゃないか? もはやどちらが鬼かわからない。

「ここで会ったが百年目!」

「はあ」

「いざ、尋常に勝負よ!」

 芝居がかった口調で剣を鞘に納めたまま振りかぶった。
 今の不意討ちを避けられたら勝ち目なんてないだろうに真っ向から勝負を挑んでくるとは、それこそ百年早い。

「俺を捕まえてみろ」
「え?」

 あんぐりと口を開けた彼女に構わず、くるりと(きびす)を返して

「よーい……ドン!」
「あっ、ちょっ……待ちなさいよ──っ!!」