Tirnis side
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 太陽が空のてっぺんに昇るころ。
 すっかり例の準備をすませた私は、王宮の回廊で待機していた。

 この回廊は、ほかと造りがちがう。

 シャンデリアや壁、柱のそこらじゅうに、金色の糸で刺しゅうをほどこしたような細やかな装飾。
 数人が『とおせんぼ』してもやすやすと突破できるほどだだ広い通路に、あでやかな紅の光沢を放つベルベットの絨毯(じゅうたん)

 そして、深紅の道の最果てにひときわ目立つ大きな扉。

 閉ざされた向こうには麗々(れいれい)しい玉座を置いた『謁見(えっけん)()』がある。
 どんな来客も王と会うために、ここは必ず通る場所だ。

 そこに“共犯者”が、(あか)いマントをなびかせてやってきた。

「おい、ティア! 来たぜ」

「ホント!?」

「ああ、今シレネが連れてくる」

「そっかぁ。いよいよね!」

「じゃあ、健闘を祈るぜ!」

「ありがと、フェン」

 緋色の背中を見送って、シン……とした回廊に一人。

 静けさとはうらはらにワクワクしすぎて鼻歌の一つでもうたいたいきぶんだけど、グッとこらえて“その時”を待ちわびた。