「お前のほうこそ言い訳が欲しいと見える……」

御託(ごたく)はいい」

 嫌味な言葉を切り捨てるように剣を抜いた。
 ベンはクッと喉の奥を鳴らすと、少し離れたアルスに視線を送る。

「アルス、合図を」

 うなずくアルス。
 しばしの沈黙が流れた後──

「始め!」

 高らかな合図とともに響く風斬り音。
 ベンが繰り出す無数の(やいば)を紙一重で避けていく。

 ……なるほど、流石に宮廷騎士ともなれば動きが洗練されている。士官学校の同級生と比べればレベルが違うことはすぐにわかった。
 だが、やはり彼本来の得意武器ではないせいか、特に慌てるほどの腕はない。

 猛攻を軽くいなしながら、さてどうしてやろうかと考えた。反撃するのは容易(たやす)いが、さっさと勝負をつけては面白くない。

 向こうも勝算がないわけではないだろう。射抜くような薄紫の眼が、俺の闘争心を(あお)っていた。

 ──さあ、仕掛けてこい!

 横薙ぎの一振りが俺の足を狙う。
 跳躍でかわしたら彼はニヤリと返す刃を斬り上げた。
 つま先が地に着く瞬間──肉薄する刃!