「ひみつよ……」 人差し指をあてた麗しい紅(くれない)のつぼみが上弦(じょうげん)の弓なりを描く。 ひかえめだが妖しいまでの美しい微笑に青年は魅せられた。年端(としは)のいかない少女だというのに艶(つや)めいた仕草には何度見てもため息が出る。 そして── 少女の真意は、夜のとばりに隠れたまま。 二つのシルエットはひっそりと藍色の闇に溶けていった。 ********************