【短編】☆夢の中のクリスマス☆

「ごめん、俺ここで降りるから。」


タクは何のためらいも無く車のドアを開ける。

ちょうど信号が赤だったらしい。

タクは左右を確認すると、ガードレールをヒョイッと飛び越え、私の元へ近づいてくる。


そこには、窓から顔を出した時と違う姿のタクがいた。

毛糸の帽子を深く被り、いつもはつけないメガネ。

そして、マフラーで顔を少し隠す。

つくづく芸能人だなと思ってしまう。


けれど、タクがこんな所を歩いているなんて知られたら大変!


「どうしたの?お買い物?」

「あっ、タ・・・。」


名前を呼んだらダメ?

すると、タクは私に微笑み・・・


「俺の本名、宅間孝太郎(タクマコウタロウ)。だからタク。今日はプライベートだし、孝太郎って呼んでいいよ。」

「へぇ。」


“タク”って名前じゃなくて苗字からきてるんだ。

ちょっとタクの事が知れて嬉しかったりして。


「てか、今日から孝太郎!決まり。」

「えっ?」

「決まり!」


決まりって・・・。

タクってこんな強引だったっけ?


「わかった・・・って、何で車降りちゃったの?!大丈夫なの?仕事!」

「あぁ、まだジュンは仕事をしているけど、俺はもうこの後は仕事がないんだ。」

「そっか。」