コンコン
ガラッ
突然扉が開いて、看護婦が顔を覗かせた。
「風間先生!ちょっとよろしいですか」
「あぁ。…それでは…千夏さん、無理はしないように。いいですね?」
先生は小さな子供に言い諭すような口ぶりで言った。
私はつい口元を綻ばせて返事をする。
「はーい」
そのやり取りを見て、優しく笑う誠さんが何故かちょっとだけ嬉しかった。
私の返事に笑顔で応えると、先生は誠さんの肩を軽く叩いた。
その時の先生の顔は笑顔だったが、どこか真剣な眼差しをしているようだ。
その先生の真っ直ぐな視線に応えるように、誠さんは頷く。
先生の方を向いていた誠さんの表情は、私からは伺い知れなかった。
けれど、決して軽々しく頷いているようには見えない。
先生は再び私に笑顔を向けると、扉で待っていた看護婦と共に病室を出て行った。