ブラッティ・エンジェル

「これ…」
サヨの驚いたような、嬉しそうな、複雑な声が聞こえて、ようやく顔を上げる。
 サヨの細くて白くて綺麗な手で輝く、シルバーチェーン。
 望からのプレゼントのネックレス。天使の羽をモチーフにしているネックレス。
「何がいいかいろいろと悩んだんだけど、やっぱりサヨはそれかなって」
「ありがとう。嬉しい」
聞こえる言葉は感謝で望んでいたものなのに、響きはどこか虚ろで困っているようだった。
 サヨはネックレスをじっと見ているだけだ。
 その内側でどんな考えが渦巻いているのか、望にはわからない。でもきっと、それは想像以上の葛藤なのだろう。
 でも、何を?
 望は自分が情けなかった。こんなに大好きな子の悩みをわかってあげることが出来ないなんて。
 しばらくすると、サヨはそっと自分の胸に手を当てた。そこには、希がいた。
 あぁ、そうか。
 望はサヨの考えている事が少しわかった。
 あのネックレスは希で、そこは希の場所で、誰も入ることの出来ない領域。
 例え、望であっても不可能に近い。
「別に、無理につけなくていいよ。寒いからどっかお店に入ろう。ほら、手がこんなにも冷たい」
胸に置いていたサヨの手を取り、歩き出す。
 その時、チラリと見えた鈍く光る希にもやもやした感情を覚えた。
 強がってみたけど、やっぱりきつい。
 どんなことがあっても、希は消えてくれなくて、サヨと希は1つで…。
 そう考えて、望は1人苛ついて悔しがっていた。