「そこまで沙耶が頑張ったところで、お客の方はたいして気付いてくれないだろ」 ……わかってるってば。 でも、そんな問題じゃないのに……。 モヤモヤした気持ちを持て余していると、コーヒーメーカーのランプが消えた。 「俺が運ぶよ」 「ううん、いい」 淹れたてのコーヒーをトレーに乗せて、お客さんのもとに運ぶ私。 買ってきた豆で淹れたコーヒーは、颯太にはわからないかもしれないけど、とてもいい香りがした。 「お待たせしました」 私が声をかけると、お客さんは書類からサッと視線を上げた。