「担当させていただく田中です。よろしくお願いします」 にこやかに挨拶してくれたのは、30歳くらいの男性の美容師さん。 「あ、どうも、よろしくお願いします」 ぎこちなく頭を下げたあたしは、鏡に向き直った。 ピカピカに磨かれた大きな鏡に、緊張した自分の顔が映る。 そのとき。奥の方の席に座っていたお客さんが、カットを終えて立ち上がった。 あたしの後ろを通って、フロントに向かうその人。 そして、それと一緒に歩く、美容師の…… 「……タケル?」 思わず声がもれた。 鏡の中で、目が合った。