「ありがとうございましたー」
本日最後のお客さんを見送って、『close』のふだをドアにかけた。
「お疲れさま、沙耶ちゃん」
「お疲れさまー」
同じカフェ店員の女の子はこれからデートらしく、いそいそと早足で帰っていく。
閉店した店内でひとりになった私は、キッチンに入った。
コーヒーメーカーの前に立ち、スイッチを入れる。
そして取り出したのは、以前、天馬さんに買ってもらったコーヒー豆。
使うのがもったいなくて、今までとっておいたもの。
そっと封を切って、その香りを胸いっぱいに吸いこんだ。
キュンとして、でも少し寂しい胸の痛み。
私はコーヒーメーカーに豆をセットし、抽出ボタンを押した。



