「いつ来ても渋谷は人が多いなぁ」
スクランブル交差点を歩きながら、天馬さんがつぶやいた。
「人ごみ、実は苦手なんじゃないですか?」
「うん。よくわかったね」
……だって、私もそうだもん。
「でも映画はこの辺りによく観に来るよ。ミニシアターが多いし……あっ」
突然、天馬さんが何かに気づいて言葉を切った。
「ちょっとごめん」
と断って、そばを離れていく。
どうしたんだろう? 知り合いでもいたのかな?
一瞬、そう思ったけど、すぐに答えがわかった。
小さい男の子が迷子になって、交差点の真ん中で泣いていた。



