「おかえり、はるか」 キッチンの扉から、沙耶が顔を出した。 その瞬間、甘くて香ばしい匂いが流れてきた。 「何か作ったの?」 「マドレーヌ。もうすぐ焼き上がるから一緒に食べよ」 「うん」 沙耶、今日はバレンタインなのに颯太くんとデートじゃなかったんだ。 ふとリビングを見ると、ソファでナミが雑誌を読んでいた。 「ただいま、ナミ」 廊下から声をかけたけど、返事はナシ。 ……聞こえなかったのかな? あたしは特に気にせず、洗面所で手を洗った。