スーパーの棚で私が見ていた、あのコーヒー豆。 ……なんで。 なんでこの人は、あんな一瞬だけで 私の欲しいものが、わかってしまったんだろう。 「ありがとうございます……」 受け取ったコーヒー豆を、すぐにはバッグには入れず 大切に、胸の前で持つ。 再び歩き出した天馬さんの、風になびく黒髪を 私は目をこらすように、月明かりの下で見つめていた。 ―――SAYA