「天馬さん、来てたんですかぁ~」

黄色い声ではしゃぎながら、男の人に駆け寄るはるか。


……その相手の顔に、あたしは見覚えがあった。


「うん。仕事の関係でね、ちょっとだけ顔を出したんだ」


やわらかい話し声と、物腰。少しクセのある、黒い髪。


……いつもうちのカフェに来てくれるお客さんだ。

以前、あたしが淹れたコーヒーを、『おいしかった』と言ってくれたあのお客さん……。



「あっ、沙耶。紹介するね。
うちのネイルサロンの、オーナーの弟さん。建築士さんなんだよ」


はるかが私にそう言ったとき、彼の視線もこちらを向いた。


そして、「あ……」と目を見開いた。