ミサキが高藤しか見えてないとか……

「私、そんな事訊いてない──」

です、と続けるハズがテルさんが運転席の窓を少し開けて『……乗れよ』と言ったのに気を取られてしまい、まるでため口みたいになってしまった。

助手席のドアが開き滑り込んで来たのは、懐かしくて抱きつきたくなる黄色。

この車内は私にとってはさっきから非日常で緊張の連続で、いつもならどうってことない黄色の雰囲気が温かく感じる。

ふわふわエアコンの風で揺れる黄色にこんなに気持ちが和むのは最初で最後の経験になるに違いない。

「二高も末商も春高もこの辺りの学校、何も変わらないッス」

助手席から後部座席の晴海先輩を振り返り、中山が言う。

そしてチラッと私を見て左手を軽く上げた。

「じゃ、マコトの頭をかち割ったのは……」

「ああ、やっぱカケルッスね」