倉庫の王様

なにも話さずに車を出した先生の横顔は少し切ない…。



なにを考えてるの?



どこに向かってるの?



卒業したら、先生の気持ちは変わっちゃうの?



なにひとつ聞けなかった。



喋り出すきっかけも全く掴めない。



「俺ん家でいい?」



先生はそれだけ言って、あたしはただ頷いた。



そのハンドルを操る手に触れたい…。



そしたらなにか伝わるかなって…。



そんな気がしてしまう…。



険悪な雰囲気は変わらないまま、着いてしまった先生のガレージ。



車を降りて、靴を脱いで中に入った。



ポケットから財布と携帯、それにタバコを取り出しテーブルに置く一連の仕草…。



いつしか見慣れた光景…。



それに気づき、久しぶりにキュンとした…。



「おいで」



テーブルの前で腕を広げる先生の胸に飛び込んだ。



先生の気持ちはよくわからない。



だけど気持ちは同じ方を向いてるよね?



「前よりいっぱい好き…」

「ん、俺も」



好きだけじゃ伝わらないくらい好き…。