8月31日。

夏休み最終日。

何もしないまま夏休みを終えてしまうのだけは避けたかった俺は、図書館に足を運ぶことにした。


一応、中3で来年高校受験を控えている身としては、勉強をするにこしたことはない。

それに図書館は静かでなんだか落ち着く上に、冷房が効いていて、快適に過ごすことが出来る場所。


カウンターで自習室の利用を告げ、指定された席に腰を下ろそうとした時。


「あれ、もしかして有貴くん…?」


声が聞こえる方へ顔を向ければ、偶然にも、そこには城崎さんがいた。


「あ…奇遇だね。城崎さんも勉強しに来たの?」

「うん。どうせ暇だからね、勉強でもしようかなってノリ」


苦笑する城崎さん。


そういえば、こんな風に城崎さんと普通に会話するの、かなり久々かもしれない。

別れを告げてからは、どちらともなく話し掛けることは無かったから。

かと言って、お互いに避けるようなこともしなかった。

その辺、城崎さんもわかってるみたいで、恋人じゃなくなった今、お互いのことには全く干渉しない。


それが俺と城崎さんの、暗黙の了解。